人に寄り添い受け入れる交流から生まれる祈り

人々の救済を目指すこの神社の姿勢はこれから広がっていくのではないか。 悩み相談など心強い存在だ。

混沌とした現代に生きる中で、自分の力ではどうしたらよいのかわからないという問題に直面することもあるだろう。誰にも相談できないと思い込んだり、話せる人がいない、と孤独に陥ったり。または家族皆で抱えてしまう類いの悩みで、八方ふさがりだと頭を抱えてしまったら。顔を上げて外へ出てみよう。そして、山梨は甲州市大和町へ赴いてみる。豊かな自然と悠久の歴史、深みのある文化の香りに心と体を解きほぐすうち、母なる大地に包み込まれる穏やかさが訪れるだろう。
　そして、向かうは『八大龍王神社』。清々しい空気が流れ、自分の中に安らぎと同時に、力が湧いてくるようだ。ここは設立当初から「民を救え」という大なる使命のもと、今日までそのために奔走し、人々の支えとなっている存在だ。「神社がある」のではなく「神社がいてくれる」と言いたい。それは、創建者である依田荘作氏から始まり、現在の女性社主である３代目・依田　元さんまで育まれている姿勢だ。
　「神様はいるのだろうか。こんなにがんばっているのに、なぜ？」と思ったら、一度心の内を話してほしい、と依田社主。神社は初詣や合格祈願やお礼参りで訪れる人が多く、また「困った時の神頼み」にもなりやすい。さらには「参拝する」というカタチで完了してしまうことが多い。『八大龍王神社』は、人と人との交流の中から生まれるものを大切に、神様への感謝の心も伝えているのだ。近隣の住民たちの悩み相談、交流会などを積極的に行ない、それは、神社の持つパワーに人の持つ温かさをもたらすのだ。そう、生きる私たちに活力を与え、目に見える解決策を導き出していける場所である。「行き詰まっていたことの抜け道が見えてきた」そんな声が聞こえてくる、活気ある場所なのである。
　本来、神社はその土地に住む神々を祀ったもので、人々は豊作や繁栄を祈願し、感謝する。神々をたたえる祭りはその土地に根づいていった。そして神主は、神と人とをつなげ、その人の思いを伝えるメッセンジャーなのだ。そしてまた、神の思いを人々に伝える代弁者でもある。
　この地域には古来からの伝説がある。八大龍王は遥か昔、こう予言したのだ。「600年後、自分の願いを託すに足りる人物が現れるだろう。そしてその人物に力を与えよう」と。そして昭和15年頃に生まれたのが、強い霊感を持つ先の依田壮作氏。八大龍王と出会い、通じ合える力を与えられたという。そして「今生の人々を助ける力」も。依田荘作氏は、富士山で厳しい修行を重ねる。この『八大龍王神社』を建立すると、彼は、悩みを抱える人のために力を尽くしていった。それが、確固たるベースになっているのである。
　時を経た今、そして現在こそ、人々がこの神社の存在や、その根底にある「心」を必要としている時なのではないか。だから、ふとここを訪れて、神主や巫女の方と言葉を交わし、すべてを受け入れてくれる姿勢に、ホッとし、悩み相談をしているうちに、信頼と交流を深めていくという人が多い。人の生活、人の心を明るく照らす身近な存在なのだ。
　何かにぶちあたると、多角的に物事や状態が見られなくなりがちだ。そんなとき、大きな視点や複数の視点をもつきっかけにもなる。立ち止まってしまうことは実に多岐にわたる。家族、夫婦、子どものこと。対人関係全般、体の不調、ノイローゼ、商売のこと。「なぜ？」と肩を落とす人、肩をいからす人たちに、依田社主は耳を傾ける。じっくり話を聞き、その人を救うために必要なことを行なう。時に厄除け、時に祈祷、お祓いで、力を与えるのだ。
　その時代に生きる人たちに必要なことをする『八大龍王神社』。現代の多くの問題に対応するためには、政治・国家単位での変化が必須である、と語る依田社主。そしてその源となるキーは「家庭」である。こういう時代だから、子どもについてこういった問題が起きるんだろう、と一般論では済まされない。一人ひとりの子と向き合うことで、その子が抱えていること、親が直面していることを知ることができるはずだ。依田社主は、大不況に伴う慌ただしい毎日の中で、家族のコミュニケーションがとれないこと、お金で解決する風潮からその価値を子どもが分からなくなってしまうこと、そして青少年犯罪などに対し、自らができることを実行している。地域住民の引きこもりの相談も受け、身近な人たちが幸せに生きられるように全身全霊で取り組む。そして、ここから全国へ世界へ、時代の流れすらも快方へ向かわせるが如く、『八大龍王神社』が働きかけるのである。