蔵の天井から全体を見渡すように堂々と君臨し、その金属の色合いや静けさはまるで大きな岩が目の前に立ちはだかっているかのように感じます。ひとたび火が入ると今までとは想像できなかった程の大きな音を立て、蔵全体に地響きが鳴り渡ります。しばらくするとその迫力とは対照的な量のアルコールしか出てきませんが、なんとも言えないほどの華やかな香りが辺り一面に漂います。そう感じるのもつかの間、次々と焼酎原酒が流れ出してきます。ある蒸留機では華やかで爽快な香りの原酒が、またある蒸留機では香ばしく焦げかおる原酒が。さあこの原酒を使ってどんな焼酎に仕上げていこうか、期待で胸ふくらみます。

私たちの故郷には豊富な水源があり、多種多様な農産物に恵まれています。豊かな風土が育んでくれた原料は自慢できるものばかり。だから素材の良さを損ねぬよう、そして特徴を最大限に引き出すことが最高のおいしいものをつくることだと考えています。継承してきた技術や道具も同様で、一生懸命発揮できるよう努力していかなければならないと思っています。すべてがそろうことで、きっと私たちらしい故郷の味わいが表現できるはずです。そして製品を通してどこか懐かしい、故郷に帰ってきたような温かな気持ちになっていただければと思っています。